「できることから始めていこう」 医療者向けのLGBTQ基礎講座を開催しました

3月12日、パラソルは「医療者向けのLGBTQ基礎講座」をオンラインで開催しました。講師をしていただいたのは、にじいろドクターズ理事医師の山下洋充さんです。

にじいろドクターズとは、プライマリ・ケア*)に関わる医療者を中心としたコミュニティ
すべての人が公平に健康を考え、享受できる社会を目指し、LGBTQについて適切な知識と態度を学び、共に考える講演やワークショップを開催しています。

*)プライマリ・ケア:あらゆる健康上の問題、疾病に対し、総合的・継続的、そして全人的に対応する地域の保健医療福祉機能のこと(日本プライマリ・ケア連合学会 Webサイトより)

受診をしたいけれど、勇気がいる」

「受付で嫌な思いをしたから行きづらい」

そんな思いを抱えるLGBTQの方々がいます。今回の講座では、基本的な知識を学ぶことに加えて、医療機関やそこで働く人一人ひとりができることについて、山下さんからお話がありました。

多様な性のあり方を支持していることを言葉で表現する

講座の目標として、山下先生が掲げたのが、(1)LGBTQの患者に対してできることを知り、自身や自施設の課題について意識することができること。(2)セクシュアリティを決めつけない、適切なコミュニケーションの方法を知ること。(3)「アライ」「カミングアウト」「アウティング」という言葉を知ること、の3つとなります。

例えば、施設ができること「差別しないこと」の公表はもちろん、一つの例としてトイレの存在を挙げます。
男性/女性用に限らず、「誰でもトイレ」をつくること。一からつくる必要があるわけでなく、車椅子の方向けの名前をそう変えるだけで良いとします。

この施策は、LGBTQの人にだけメリットがあるわけではありません。山下さんは「異なる性別の子を持つ両親や、障がい者のケアをする方にとっても嬉しいこと」と語りました。

2つ目の適切なコミュニケーションについては、相手の性行動や体のこと、背景について勝手な推測をしないことの大切さを挙げます。
例えば、レズビアンの人だから、異性と関係を持ったことがなく、子どもがいないといったことを決めつけないこと。「あなたの家族について教えてもらってもいいですか?」など、開かれた質問で確認することを推奨しました。

3つ目の「アライ」「カミングアウト」「アウティング」を知ることでは、それぞれの言葉について山下さんから説明が行われました。
このレポートではアライ(Ally)について紹介します。LGBTQの支援者、味方であることを意味するアライ。医療機関ができることに、「多様な性のあり方を支持していることを言葉で表現すること」と語りました。

<「アライ」であることを伝える言葉の例>
・「良いケアを提供したいと考えていること」を伝える
・「より良いケアのために他に何ができるか」患者からのフィードバックを求める
・何か誤ったことをしたことに気付いたときは速やかに謝罪する

お話をいただいた後、参加者からの質疑応答が行われ、講座は終了しました。

最後に、山下さんから「やるべきこと、学ぶべきことが多いと感じるかもしれませんが、できることから始める形で大丈夫です。ぜひ一緒にあるべき姿を考えましょう」という言葉が贈られました。

地域の「医療施設フレンドリーマップ」づくりに向けて

パラソルでは、一人ひとりが安心して自分らしく生きられる地域づくりを目指す「くにたちレインボープロジェクト」を2021年から始めています。

その中の取り組みとして、多様な性への配慮を実践する市内医療施設の情報を集約した「フレンドリーマップ」を、地域の皆さまと共に作りたいと考えています。今回の講座は、そのキックオフと位置付けています。

本プロジェクトに賛同いただいた医療施設には、レインボープロジェクトのステッカーをお配りするとともに、パラソルも協力させていたただきながら、一緒にLGBTQの方々が安心して受診できる医療施設の在り方を一緒に考え、実践していけたらと思っています。

今回の講座については、市内の医療施設に対してアーカイブ動画をお送りすることも可能です。ご希望される場合は、電話番号(042-501-6990)かメールアドレス(info@kuni-sta.com)宛にご連絡ください。

難しい対応は必要ありません。全ての人が安心して暮らせる地域になることを目指すため、どんなことができるかを一緒に考え、実践し、そして「フレンドリーマップ」を共につくりましょう。ご協力よろしくお願いします。